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閑話休題(No.483)

 俊 堂

 このたびの東日本大地震におかれまして、災害の影響を受けた皆様、大切な人を失った方々に哀悼の意を捧げるとともに、心よりお見舞い申し上げます。

 これまで私が生きてきた半世紀余りの中で、かつて経験したことのない大災害を文字通り、目の当たりにしてしまいました。大災害の進行を、テレビを通じて同時進行で疑似体験するという前代未聞の経験は、これまではあり得ないものでした。それだけ今回の震災は恐ろしいものとして、心に深く刻み込まれてしまいました。
 私達にできることは、被災地に義援金や必要な物資を届けることと、この壮大な犠牲を無駄にせず、次の災害に対する方策として生かすことではないかと思います。それにしても今回のような想像を遥かに超える災害に対して、人間が如何に無力であるかを思い知らされたような気がします。言い換えれば地球という惑星の誕生からこれまでの歴史を考えれば、いかなる耐震構造も、また強固な防波堤なども何の意味もなく、地球のほんの一瞬の平静時に、仮の繁栄を楽しんだだけなのではないかと思いたくなってしまいます。
 ともあれ余りにも突然、家族や家を失い途方に暮れる被災者の皆様に、一刻も早く笑顔が戻ることを祈らずにはいられません。

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 今年も無事に、静岡伊勢丹を会場に駿府各流大茶会が開催されました。大震災直後のことでしたので、実行委員会により、開催の是非について慎重に討議し、結果として被災地支援茶会として実行されました。やはり被災者の心情に留意しての開催ということで、設営の趣向や参加者の着物に至るまで、細かな配慮をしての実施となりましたが、茶会そのものは大盛況で、大勢の皆様に入席して頂きました。
 通常の茶会と異なり、掛軸の言葉や道具の趣向にも神経を使い、逆にいい経験となりました。私の立礼席は玉露の双急須点前を三点飾りで行いましたが、述べ五百九十人余りの人が入席し、お茶の美味しさを大変喜んで頂きました。
 副家元の席は初日の本席で、やはり玉露の棚飾りの席でしたが、桜をテーマに桜に因んだ道具やお菓子を用い、渋さの中にも華やかさが見え隠れする趣のある席となりました。何度もこの紙面を通じて伝えておりますが、茶席というのは席主の細やかな配慮があって初めてお客様に心が通じるもので、ただ道具を並べてお茶を飲ませればいいというものではありません。小さな気配りの積み重ねが良い茶席になることを、よく理解して下さい。

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 大震災後の三月、かねてより静岡県の地域活性策の一環として、静岡茶を使った結婚式=茶婚式の企画イベントがあり、震災直後の世情を鑑みて写真撮影のみ行われ、点前として当静風流が依頼を受け参加しました。
 模擬茶婚式として、当初は県知事自らが立会人として参加し、式そのものは、ファッションデザイナーの桂由美氏がプロデュースして行う予定でしたが、観光地でのロケであったため、企画された内容を単に資料として保存することに留め、関係者のみによる撮影会となりました。いずれはこの煎茶による茶婚式が広く普及していくことを願っております。

(茶婚式の様子)
    (茶婚式の様子)




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Senchadou Seifuryu